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スピッツ   スーベニア

No.41 ◆ 2005年1月12日

 スピッツの新作をどなたにもお薦めしたい。昨夜からずっと何度もこれを聴いているが、久々の傑作という感じがする。アルバムとしてもよく練られたアルバムで、1時間近いが変化に富んでいて、最後までスーッと聴き通すことができる。もともと駄曲の少ないバンドだが、今回はまた粒揃いだ。
 ファンではあるが近年の作品は正直言ってちとつらかった。特に「隼」は騒々しすぎた。その気持ちはわかる。「軽く見るなよー、俺達はロックバンドだー!」と言いたかったんだろうと思う。流されないためには、それも大切なことだ。
 ここでも、そういう熱いハートは失っていないが、持ち味の歌心も戻ってきた。うまい具合にピアノ伴奏のバラードや、沖縄調、レゲェ調の曲を取り入れて、それぞれがそれぞれを引き立てるような構成になっている。
 意味のある日本語が、明瞭な発音で歌われ、それが自然なロックとなっていること。これは本当に凄いことだ。自分も歌書きの端くれだから、その凄さがよく分かる。
 あの「ハチミツ」と比べるのはやめよう。あれほどのアルバムはそう作れるものではない。それより、今また40歳を前に、こういう充実した作品をずらりと並べてきたことが嬉しいし、これからも草野正宗にずっと注目していきたい。
 深い愛着を込めて作られた一作。その真摯な姿勢も加味して5つ星。


PABLO CASALS
ENCORES AND TRANSCRIPTIONS 2

No.42 ◆ 2005年1月13日

 スピッツの新譜が来た日と同じ日に、ずっと前に通販で注文していたカザルスの小品集とカルロス・ガルデルが届いた。休日になったので、ゆっくり聴いている。
 どちらも1920〜30年代の録音である。でも音は気にならないくらい演奏が素晴らしい。ガルデルもいいが、それ以上に今回はこのカザルスだ。部屋の空気をさっと清めてくれる。
 僕は昔からクラシック系の楽器ではチェロが一番好きで、ジャズ中心だった頃にもいろいろ聴いていた。カザルスはカセットに入れてよく聴いていたけれど、今回このCDが目にとまり取り寄せてみた。
 NAXOSという有名なクラシックの廉価盤専門のレーベルから出ている。とにかく安い。764円。前半はわりと地味だが、後半は「トロイメライ」や「わが母の教え給いし歌」など有名曲が並ぶ。軽やかに流れ出るような演奏で、とにかく気持ちがいい。
 ずっとピアノとチェロなのに一番最後にオーケストラが鳴り出すが、これが全くの蛇足。「ボーナス・トラック」じゃなくて「ボケナス・トラック」だ。雰囲気が壊れるだろうが。星半分引こうかと思ったが、この値段で、この量、この演奏なのでやっぱり満点にした。
 スピッツと世界が違いすぎるような気もするが、「トロイメライ」は草野正宗の大好きな曲だという。


NANCI GRIFFITH
OTHER VOICES OTHER ROOMS

No.43 ◆ 2005年1月30日

 モダン・フォークの先達の歌をたくさん歌ってる。1曲目聴いた限りじゃ、5つ星間違いなしという感じなんだが、聴き進むとちょっと退屈する部分もある。ま、英語が分かればもっと感じ方も違ってくるんだろうけど。ちょっと歌い手が健康的過ぎるというか、育ちが良すぎるというか、そんな感じがしてしまう。
 と、文句ばっかり言ってるが、もちろん嫌いなサウンドではない。いい歌が、いい音で、たくさん並んでいる。岩井宏の歌と思っていたの、トム・パクストンのだったんだな。これはかなりいい。(「30才」では岩井宏作曲になってたけど、ちょっとまずいよね。) アーロ・ガスリーは声が好きじゃないけど、ここではうまくハモってくれてる。ヘタクソなボブ・ディランのハーモニカは、なくてもよかったな。おや、また文句になったけど、水準は行ってるよ。ブックレットも丁寧です。また別な日に聴いてみよう。


CHARLIE HADEN & KENNY BARRON
NIGHT AND THE CITY

No.44 ◆ 2005年2月6日

 一日中曇った日曜日の夕方、ストーブの側で豆を食いながらコーヒーを飲んでいる。これからしばらくは花粉症が怖いので、休みの日は部屋でこんな感じだろう。
 「夜と街」と題されたこのアルバムは、ピアノとベースのデュオだ。とても淡白な味わいのアルバムで、僕はこれを真剣に聴いたことがない。けっこう有名なスタンダードをやっているのに、しばらく気付かなかった。それぞれが10分あまりの長い演奏で、テーマを崩し気味にあっさりと流した後は、長い淡々としたソロが続く。たまに拍手がパラパラと聞こえるのでライブだと分かる。語りはなく黙々とピアノとベースが会話していく。渋い。
 でも、このアルバム、つい何度もかけてしまうアルバムだ。このコーヒーや落花生みたいなもんだろうか。塩も砂糖もかけてないんだけど、飽きのこないこの味。
 僕は、今日やっと気付いた。自分がこのアルバムをとても気に入っていて、実は5つ星だったんだということに。


MILDRED BAILEY    MRS. SWING (BOX SET)

No.45 ◆ 2005年2月20日

 昔お世話になったジャズ喫茶のマスターのサイトで、安くていい輸入盤の箱物が出ているのを知った。大概はSP時代とかの古い録音だが、何しろ安い。
 このミルドレッド・ベイリーは4枚組で2735円。それぞれケース入りで、とても丁寧で詳しいブックレットが付いている。音も選曲も良い。買う前は不安だったが、なかなか立派な物だった。
 ミルドレッド・ベイリーは、エラ・フィッツジェラルドに次いで好きな女性ジャズ・ヴォーカリストだ。学生時代に初めて聴いたのがそのジャズ喫茶だった。ある日店に入っていったら、浅川マキの「あの人が死んだら」の本歌がかかっていた。その時の印象は鮮烈に覚えている。
 それからLPを2枚ばかり買った。そのDECCA盤と、全盛期と言われるCBS時代のものだった。今回のBOXは、CBSに入れた主な曲は大体収められている。
 自作曲「あいさつしよう」の編曲で間奏を入れる時、この中の"Thanks for the Memory"のチュー・ベリーのソロが頭を流れていた覚えがある。
 こういうものは星が付けにくい。全てが5つ星ではないが、この商品の満足度と言うことで。


チョン・キョンファ(vn) クラウス・テンシュテット指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲

No.46 ◆ 2005年2月27日

 チョン・キョンファが今年宮崎音楽祭に来る。早速券を買った。
 僕がこの曲をいい曲だと思ったのは、このCDを聴いてからである。クラシックにちょっと興味が出ていた頃だった。スターンという人の演奏で聴いた時にはさして面白い曲とは思えなかったのに、このチョン・キョンファのCDを聴いたらものすごくいい曲に思えてきた。ヴァイオリニストの違いじゃないかと思った。それを確かめてきたい。曲がこのベートーヴェンじゃなくてブラームスのVn協奏曲なのが残念だが…。
 偶然だけどこのスターンさん、亡くなるまで宮崎音楽祭の音楽監督だった。もちろん立派な演奏家なんだろう。でも、アメリカのミュージシャンて、大手レコード会社の手で実力以上にうまく売り込まれている人が多いからな。


CROSBY,STILLS,NASH & YOUNG
4WAY STREET

No.47 ◆ 2005年4月2日

 嵐の如き3月が終わった。気がついたら僕は知らない職場にいる。ベテランと呼ばれる僕でも、この環境の急変はこたえる。気が滅入りそうだ。
 呆けたような休日。それにしても、「働かない休日」も久しぶりだ。こんなに心が疲れた日は、昔々の愛聴盤でも聴こう。「青春の1枚」っていうやつかな。あ、これ2枚組だった。
 C,S,N&Yは高校時代に夢中になって聴いたものだ。このライブ盤は、「デジャヴ」なんかに比べたらちょっと雑だけど、それでもこの音の前には星を付ける気など無くす。



中林淳真    絵画的ギター組曲

No.48 ◆ 2005年4月22日

 週末である。新しい職場にもようやく慣れかけたところ。家庭訪問を終えて、我が家にたどりつき、ふとこの盤を思い出した。春の夕暮れ、狭い部屋に温かなギターの音色が流れる。LPから録音したので針の音がする。懐かしい。
 ずっと昔学生の頃、FMラジオで聴いて買い求めた盤だった。ギター一本で外国を回り、その印象を元に書いた自作曲という。
 この盤は今CDでは出ているのだろうか。そう思いネットで調べてみた。ジャケットは違うが出ているようである (「絵画的ギター組曲」エス・ツウ)。ギタリストの中林淳真氏もご健在であった。
 それにしても、「出前演奏 セレナーデ・コンサート」とは粋ではないか。その姿勢が、この音楽にも流れている。あれから20年以上も経ったのに、音楽家としての変わらぬ信念でもって生き続けて来られたのだろう。音楽は甘く優しく切ないのに、底に流れる強さのようなものが感じられる。



大滝詠一    大滝詠一

No.49 ◆ 2005年5月1日

 僕は中学生の頃から大滝詠一が好きだった。はっぴいえんどはそれほど面白いとは思わなかったが、大滝だけは気に入っていた。初めてサイダーのCMを聴いた時の印象は強烈だった。
 そしてこのアルバムと「ナイアガラ・ムーン」を買い、ジャズ一辺倒だった時代もずっと聴き続けていた。「ロング・ヴァケーション」が出た時は、ちょっと違和感を感じたものだった。
 このアルバムは全体に短い。1曲1曲が短いし、全体も短い。でも、無駄もスキもなく仕上がっている。完成しているアルバムだ。
 長けりゃいいってもんじゃないのは、CD時代になってよく感じることだ。このアルバムも、CD化された方は大滝自身の手でいろいろおまけが入っているが、その分しまりがなくなっている。特に1曲目は「おもい」で始まらなくてはならない。ただし、シングルだった「空飛ぶくじら」、これだけはここに入れてもいいと思った。
 このアルバムは息子の愛聴盤でもある。名盤は色褪せない。時を越える。


MUXINE SULLIVAN    LOCH LOMOND

No.50 ◆ 2005年5月8日

 いやあ、気持ちいいわ。この歌い方。「脱力系」とか勝手に名前をつけてみたけど。バックの演奏もいい。音はスウィング・ジャズなんだけど、この人はよく知らんかった。曲が「ロック・ローモンド」とか民謡のジャズ化で当たった人だからかな。某通販サイトでは「クラシック」に分類されたりしてる。
 ネットでいろんなとこ回っているうちにこのアルバムにぶつかって、視聴、即購入。今年の連休の最後をまろやかな歌声で締めくくってくれるよ。
 ネットでいろいろ調べてみると、この人、ペギー・リーのアイドルだったとある。そう言えば、歌い方がそっくりだ。そうか、ペギーさんの「投げ節」は、ここら辺がルーツなのか。でもこの人の方がうまいし、すがすがしい感じがする。また一つ愛聴盤ができた。


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