聴きつつ思い浮かぶことなどを・・・  

BILL EVANS TRIO   EXPRORATIONS

No.1 ◆ 2004年1月1日

 ビル・エバンスと言えば、まずは「ワルツ・フォー・デビー」。それは分かる。でもこれもあるよ、と言いつつ今年の幕開けは「エクスプロレイションズ」。
 あ、新年明けましておめでとうございます。音盤随想という感じのページを作ってみました。テーマなし、ジャンルなし、不定期更新で、気ままにいってみたいと思います。

 しばらくジャズから遠ざかっていたら、ヨーロッパ方面のピアノ・ジャズが人気になっている。猫も杓子も「エバンス派」。これはしょうがない。昔のピアニストが「パウエル派」ばかりだったように。それに並び立つのはこの人しかいないでしょう。もう死んでから20年以上も経つのに、その凄さはいっそう際立ってきている。
 「エバンス派」と言われてるピアノ弾きたちも、こんなの聴いて、脳天まで痺れて、ひたすら修行した人達なんでしょう。
 30代ぐらいかな、ジャズを聴いても面白くない時期があったけど、そのころでも、エバンスだけは聴いていた。ジャズ以外に、「エバンス」というジャンルがあるみたいだった。「聴き飽きる」ということがない、本当の天才の音楽。モーツァルトかエバンスか、という感じやね。こういう録音が残っていて、本当にありがたい。ということで、新年は、敬意を表して、ビル・エバンスから。
 真冬の朝にコーヒーでも飲みながらじっくり聴いてみるべし。じわっと満ち足りてきます。
 当然五つ星。 


DUKE JORDAN TRIO   FLIGHT TO DENMARK

No.2 ◆ 2004年1月1日

 初めて我が家で迎える元日。飲んだり食ったりで、また体重増の気配。いかんなあ。
 恒例のサッカー観戦が終わって、さてこのまったりした空間にぴったりのは、と選んだのがこれ。デューク・ジョーダンさん。
 去年の秋に、レコードをCDに起こそうと思って、久しぶりに針まで買った。これはそうやってCDにした内の1枚。
 これを一番聴いていたのは学生時代だ。その当時は朝起きて、トーストをかじりながらこれをかけていた。この人は作曲家型の演奏家だから、派手なプレイはしないけど、ソロが調和していてメロディが美しい。朝飯も喉に通る。哀愁の瞬間作曲家。
 それにしても、アナログ・レコード。立派に聴ける上に音も生々しいではないか。コロコロと気持ちの良いピアノの音が転がっていく。 


JOS VAN BEEST TRIO   BECAUSE OF YOU

No.3 ◆ 2004年1月1日

 「ヨス・ヴァン・ビースト」と読むらしい。これもピアノ・トリオ。オランダのピアノ弾きだそうである。録音は1993年とあるから、我が家のジャズ盤の中では異様に新しい。
 大阪の下駄屋の若旦那さんが起こしたという話題のジャズ・レーベル「澤野商会」から出されている。売れているそうだ。この前出張で大阪の「ミムラ」というジャズ専門のレコード屋さんに寄った時買って来た。
 はじめは、小器用だが自分のないピアニスト、という印象だった。1曲目はいかにもヨーロッパという感じだが、2曲目はハード・バップ風だ。ボサノヴァもある。「ミッシェル」が途中から「WAVE」になったりする。でも、何回か聴いているうちに、なかなか楽しませてくれるアルバムだなと思えてきた。
 それに音がいい。あんまりLPより音がいいジャズのCDなんてなかったけど、もうCD時代も長いから、音も良くなってきているんだろうと思ったりした。これ聴いたら、アナログをCD化するのがだんだんめんどうになってきた。
 それからこのジャケット。これは澤野さんの方で作り変えたみたいだけど、商品価値が上がったというか、よくできてると思う。こういう売り方もありなんだろう。
 そこら辺も加味して四つ星半というところかな。
 この時、「ミムラ」さんの推薦で、同じ澤野のアラン・ブロードベントという人のも買った。演奏的にはこのビーストさんよりいいかもしれない。それと最近あと2枚、タワーで澤野物を買っているんだが、明日忘年会に行く途中、車の中で聴こうと思う。 


GILLIAN WELCH   REVIVAL

No.4 ◆ 2004年1月2日

  これは古いアメリカン・フォークのスタイルだ。でもやっている人は若い。
  考えてみると、昔はいろんなジャンルを聴くなんてことはあんまりなかった。ジャズならジャズ、フォークに熱中したらフォーク。今はほんとに無節操にあれこれ聴けるようになったが、それだけ、聴き方も浅くなっているという感じもする。
  さて、ギリアン・ウェルチ。相方の男とともに、ギター弾き語り主体の素朴な歌を聴かせてくれる。ジャズなんかと比べれば単純で、簡単に真似できる音楽だ。だが、訴えかける力は、達人のピアノ弾きまくりなんかよりも強かったりするのがこういう語り物だ。
  ウェルチさんの声がまず良い。でもそれを弾きたてている相方のデイヴィッド・ローリングスという人。この人がほんとにいいギターと声をからませて、主役の歌を引き立たせている。ライナーによると、この二人はもともとデュオで、曲も大半は二人の共作だということだ。「さまざまな理由からソロでデビューすることになった」とあるが、なんとなく気の毒な人である。
  エレキによる雰囲気違いの曲も入ってるので、それ引いて四つ星半。  
 

Berndt Egerbladh Trio   A BOY FULL OF THOUGHTS

No.5 ◆ 2004年1月4日

 昨日車の中で聴いたんだが、あんまりよくなかった。ジャズはあんまり車の中で聴くものではないなと思う。車の中は車向きの音楽がある。
 これも「澤野」の1枚。「ベント・エゲルプラダ」と読むそうだ。スウェーデンのベテランらしい。ジャケットが印象的。
 家で聴き直してみると、車で聴いた時より印象はいい。甘味はあんまりない。アドリブがややドライというか、多少頭が先行した音楽かなという感じがする。その辺が北欧なのかな。自作曲中心で、スタンダードも少しやっているがひねりが入っている。
 それから、ベースの音がベロベロだ。弾きやすくしているんだろうけど、やっぱりガツンというベースの音がいいな。アルコも音が外れて聴きづらい。
 とは言っても、たまに辛めのやつが聴きたいときはある。心が落ち着いている時に、じっと座って、いい音で聴くといいかもしれない。また別の時にじっくり聴いてみることにする。
 それにしても、オランダだとかスウェーデンだとか、ニュージーランドだとか、最近のジャズは国際的だね。こりゃ、ジャズピアノ・ワールドカップなんてアルバムが作れそうだ。 
(追記:このアルバムはその後気に入らず、売却)  

長谷川きよし   選集

No.6 ◆ 2004年1月4日

 こういうアルバムは売ってません。私が勝手に作った「私的ベスト盤」。ジャケットは、ファンサイトの写真を拝借して作った。
 選曲は以下の通り−
《01 黒の舟唄 02 卒業 03 音を立てて愛が 04 キャティ 05 後姿 06 心中日本 07 灰色の瞳 08 小さなひなげしのように 09 かなしい兵隊 10 風景画 11 遠く離れたお前に 12 こんなに遠くまで 13 メランコリー 14 私のweekend 15 アモーレ・ミオ 16 ヴィアナへ行こう 17 黒い牡牛 18 街角》

 こういうすばらしい歌い手の傑作の数々がCD化されていない。長谷川きよしの場合は、最近シングル集が出たからまだいいが、まだまだ忘れられた名曲は数多い。
 「黒の舟唄」は、高校生の時に買ったドーナツ盤からとった。6/8拍子で歌われると間延びするこの歌を、しっかり8ビートでロックしてくれる。2の「卒業」は、ライブ盤から。この歌もシングルでは間の抜けた歌謡曲調アレンジになっていたが、ギター一本でサンバ風に語っているこちらの方が、数段いい。それから「キャティ」や「小さなひなげしのように」が,心に沁みる。名盤「遠く離れたお前に」に入っていたが、CD化された時、「Another Door」といっしょにされたために、省かれた曲だ。それはないだろうと言いたくなる。
 「灰色の瞳」は、最近椎名林檎がスピッツの草野とカヴァーしたが、売れている奴はもっとこういうことをやって欲しい。
 高校生の息子が、「長谷川きよし、いいね。歌がうまいね。」と言う。「かなしい兵隊」は名曲だと言う。若くても分かるやつには分かる。もっともっと多くの人に聴いて欲しい歌い手だ。  
 

RY COODER   CHICKEN SKIN MUSIC

No.7 ◆ 2004年1月5日

  明日から仕事なので、仕事の準備しながらゆったりと過ごしている。「黄色いバラ」が聴きたくなったのでこれをかける。
 ライ・クーダーなら、アルバムで言うとまず「BOOMERS STORY」か、これ、そして「パラダイス&ランチ」「紫の峡谷」あたりかな。
 本職のギターがもちろん素晴らしいが、打ち込みでは出せない全体の音が何とも言えず味わい深い。アコーディオンとかもいいなあって思う。「スタンド・バイ・ミー」をアコーディオンと男性コーラスに乗せて、気持ち良く歌っている。「黄色いバラ」では、スチール・ギターがとろとろにしてくれる。あんまり加工されていない、そして人と人との出会いで生まれる音。僕も機械で音楽作っているけど、こういう手触りの音には絶対に勝てないって思う。
 そしてこの緊張感のない歌い方。仕方なく歌ってますという感じもするけど、でもこのヴォーカルが僕は好きだ。味がある。やっぱりうまいんだろうと思う。
 シンプルな「グッドナイト・アイリーン」でアルバムは終わった。簡単そうでいて、奥は深い。その道を究めている。 


JOHN COLTRANE & JOHNNY HARTMAN  

No.8 ◆ 2004年1月5日

  8ビート物を聴こうとしたが、どうもそういう気分じゃないので、ジョニー・ハートマンをCDにすることに。
 車の中で聴いたら危うく眠りそうだったハートマンも、けだるい午後には心地よいこと。
 何でハートマンさん引っぱり出したかというと、CSでやってた映画「マジソン郡の橋」で、久しぶりに聴いて。いやあ、さすがジャズファンでならすクリント・イーストウッドさん、なるほど、そこはそうきましたか…
 ということで久しぶりに聴いてみると…、いいねえ……。歌い出しの「They say…」でぞくっときた。ポップスとか聴いてると高い声ばかり良く聴こえるけど、この深ーい低音、気持ちいいわ。と言うよりこの年齢になって聴いた方がよさが分かるという気がした。
 それから、コルトレーンがいい。そりゃもちろん知ってたし、「バラード」も持ってるけど、あらためて凄いと思った。この、つやつやの音ね。そして、歌い回しのうまさ! バリバリ吹くコルトレーンを聴くのはさすがにもうしんどいけど、でもやっぱり凄い人だなあと再認識。例えるならピカソのデッサンだ。 


高田 渡  

No.9 ◆ 2004年1月6日

 「季節、季節が、素通りする〜」 
 今日から仕事始めである。ゆうべ最後にかけた「石」が一日中頭の中を回っていた。
 このアルバム、高田 渡の作詞は一つもない。曲にしても、もともとあちこちから借りてきて平気な人だ。じゃあ歌がうまいかというと、一般的にみたらおそろしくヘタだ。にも関わらず、この存在感は何だ。
 金子光晴をミシシッピ・ジョン・ハート風に語ってみたり、明治演歌をアメリカン・フォークに乗せたり、ディキシーをバックに「私の青空」をぶちかましたり、あやしいシャンソンを自分流にがなったり。面白すぎる。
 でもこの人は、変人奇人のように思われているけれど、いたって真面目な人なのだ。現代詩を深く読み込み、いい歌を探してはそれに没入し、それを自分の中で融合させてこういうものを作ったのだ。創造というより、解釈者なのだ。
 そしてもう一つ、今の時代にもりっぱに聴けるものとして残ったのは、サウンドの確かさだと思った。デキシーキングスは言うに及ばず、ジミー竹内や原田政長などのジャズメンのサポートもあり、柳田ヒロのピアノ、中川イサトのボトルネック、坂庭省吾のバンジョー、松本隆のドラムまである。誰か知らないがプロデューサーが立派な仕事をしたのだろう。高田渡という素材をもとに、うまく料理してこういうアルバムにまとめあげた。
 それからご本人のギター。意外な気もするがこれがまたかなりの達人だ。こうやって見るとこの人、ライ・クーダーに共通するものがある。
 父が高田豊という詩人で、息子がスライドギター奏者の高田漣。親から子へ、何が伝わったのだろうか。
 アルバムの完成度の高さに、五つ星。 


ROY ORBISON   THE BLACK & WHITE NIGHT LIVE!

No.10 ◆ 2004年1月10日

 ばたばたと新学期が始まったが、この週末でちょっと一息ついて立て直したい。そんな気分の土曜日。ロイ・オービソンをかけながら茶を飲む。
 まあ、言えばアメリカの古い歌謡曲。自作自演だからシンガー=ソングライターのはしりか。60年代前半に活躍した人だから、リアルタイムでは知らない。シングルを集めたベスト盤を聴いて気に入り、子どもが小さい頃、家や車でよくかけていた。
 ところでこの人、エルビス・プレスリーに対抗していたというが、どうもそんな感じには見えない。もっと繊細と言うか、細やかだ。きれいなメロディが次々に出てくる。そして声。ベルベット・ボイスとか言われていたらしいけど、気持ちのいい声だ。
 息子がアカペラやろうと誘われた時に、最初にやったのがオービソンの「プリティ・ウーマン」だったという。その時、「あ、いいね!」ということになり、WESTARS結成に繋がったらしい。息子はこの歌を小さい頃から耳にしていたので、パッと歌うことができたのだ。何気なく聴いている歌が、子どもの人生に影響を及ぼしているんだねえ・・・。その後、このグループが「プリティ・ウーマン」を歌う時に、メンバーのN君が突然「ガラガラガラ」とオービソンの得意技「うがい唱法」を始めたのには笑った。彼のお父さんもファンだったのかもしれない。
 このアルバムは1987年、リバイバルした時のライブ。ビデオも出ているそうだがまだ見ていない。オービソンを尊敬するミュージシャンがたくさん参加している。Bruce Springsteen, Jackson Brown, Elvis Costello, Tom Waits, K.D.Lang, Bonnie Raitt・・・ 顔ぶれを見ただけでも凄さが分かる。全盛期を五つ星とすると、このライブは四つ星半くらいだが、それでも、いい雰囲気の中で、いい声で歌う、いい歌を味わうことができる。  


No.11〜 →


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