聴きつつ思い浮かぶことなどを・・・   No.1から読む

CHARLIE HADEN  NOCTURNE

No.21 ◆ 2004年4月17日

 淡々としている。静かな音楽だ。このごろずっと枕元で聴いていた。
 なにしろ「夜想曲」である。「ジャズです!」という感じではない。ヴァイオリンも出てくる。
 でも、軽くはない。深みがある。あっさりしているようで、濃厚なものが底流にあるのだ。
 コクがあるというか、豊穣な味わい。
 ビールの宣伝のようだが、そんな言葉がぴったりする。
 曲も、この曲がというような強い印象の曲はない。でも全体に粒が揃っていて、極上のナイト・ミュージックが続く。散らかしたわびしい寝床で聴くような音楽ではないのかも知れぬ。
 キューバなどのロマンチックな歌曲が素材だそうだが、ピアノもゴンサロ・ルバルカバ。自分がリーダーでないためか、抑制された表現で、いっそうそのうまさが光っている。
 リーダーのヘイデンの安定したベースの響きよ。
 なんということはないようでいて、いつ聴いても心惹かれる、そんな一枚だ。


ARCHIE SHEPP & DOLLAR BRAND   DUET

No.22 ◆ 2004年5月9日

 連休中、ずっと自分の歌の仕上げにかかっていた。ほんとは、こんな時聴くのはジャズじゃない方がいいのだ。いや、もう何も聴きたくないと思える日もある。それでも、最近LPから起こしたこのアルバムに心惹かれていた。アーチー・シェップとダラー・ブランドのアルバム。1978年、日本のDENONで製作。
 シェップはここ数年ヴィーナスに吹き込んだバラード集が好評らしいが、僕はまだ聴いていない。フリーとか取っ付きにくい音楽をやっていた人が、ちょっと歌心のあるバラードなんかやると、甘味と渋味がうまく混じっていい感じになることがある。このアルバムのシェップなんかがそうだと思う。「人間の証明のテーマ」とか、「レフト・アローン」とか、一種の売れ線ねらいだろうけど、いい感じに仕上がっている。この頃のDENONはいいアルバムを作っていた。今CDでは出てないのかな。
 今日みたいな雨の夕暮れに流れると、気分が落ち着く。歳のせいかあんまりうるさいのは聴きたくなくなってきたけど、ジャズはこういう「しみじみ系」もいっぱいあるから、まだまだこれからの人生を楽しませてくれるな。


ARCHIE SHEPP   BLUE BALLADS

No.23 ◆ 2004年5月11日

 ヴィーナスに吹き込んだバラード集の一つを取り寄せて、早速聴いてみたが…。
 一言で言うと、ゆるい。そして、しつこい。衰えたかな。
 いや僕は、「前衛ジャズ」とかは苦手だし、バリバリ吹いていた頃のシェップをよく知っているわけじゃないから、そういう意味じゃない。バラードでいいと思う。ただ、上の78年のシェップの音から、張りがなくなっている。それでいて、聴きづらくなっている。瑞々しさがなくなっていて、汚れている。今この音楽を誉めている人も、上のDENON盤を聴けばそう思うだろう。
 歌も歌っているが、最初は面白かった。けっこううまいと思った。でもやり過ぎかな。ほどほどにしといた方がよかったと思うな。
 曲が変われば、もう少し聴けるかな。他のも聴いてみよう。


知名定男   島うた

No.24 ◆ 2004年5月23日

 しなくちゃならないことはいっぱいあるはずなのに、ただ時間が過ぎて行った。真夏ならそれほど惜しくはない。たいていは暑さに耐えるだけの休日だ。でも気持ちよい5月の休日をぼうっと過ごすのは、何か空しいもんだ。それでも何にもやる気が起きずに、荒れ果てた庭で5月の風に吹かれていた。
 音楽もいろいろ聴いたけど、今日一番しっくりしたのはこれだった。
 日本にもこういうフォーク・ソングがあったんだ。でも沖縄じゃなくても、俺たちの周りにはなかったんだろうか。あのどうしようもない「日本民謡」みたいなのじゃないやつ。こういう粋な弾き語りはなかったんだろうか。あったのかもしれないが、どっかで切れたんだろうな。子どもの頃、生まれ育った漁師町で聴いた盆踊りの音楽は、スウィングしていた。弦の伴奏はなかったけれど、沖縄の歌を聴くと、いつも感覚的に近いものを感じる。先祖の歌っていた歌もこれに近いものじゃなかったろうか。
 沖縄ポップスの先駆者の知名定男。ネーネーズの仕掛け人の知名定男。でもこれは、素のままの知名定男。こういう歌を、こういう風の中で、機械を通さずに聴いてみたい。


登川誠仁&知名定男   登川誠仁&知名定男

No.25 ◆ 2004年7月3日

 6月は島歌ばかり聴いていた。
 そんな時、某大手通販サイトで3000円のCD券が当たった。「このCDに初めてレビューを書き込んだ人に抽選で〜」とかいうやつに当たったらしい。それで買った、と言うかもらったのがこれ。
 このジャケットはなかなかいい。多分、クラプトンとBBキングのパロディなんだろうと思う。まずはしばしこれを眺めて。
 それでまあ中身の方はというと、登川のオジイはちと聴くのがつらいが、知名定男はやっぱりうまいな。声が好きだな。節回しとかね。こういうのをじっくり聴いてから、「ネーネーズ」なんかを聴き返すと、また面白く聴ける。「エラブ百合の花」とかね。
 とにかく車でガンガンかけても違和感はなかった。ようわからんのもあるけど、まああんまりごちゃごちゃ言いたくない。とにかく面白い。貫禄に四つ星半。


長谷川きよし   ACONTECE

No.26 ◆ 2004年7月17日

 長谷川きよしはやはりうまいという話になった。受験生である息子は、「大学に受かったら長谷川きよしのライヴに行こう」と言う。
 ネットで調べてみると、最近も旺盛にライヴをこなしているようである。ただし、録音の方はちょっと寂しい。無論、聴く側の問題であろう。
 オークションにこのCDが出ていたので入札するとすんなり落ちた。'90年代の録音で、再録曲が半分くらいあるが、なるほど評判通り素晴らしい。
 欲を言えば再録曲の選曲がもう一つかなという気もするし、女性の語りが入ってるのも気になるが、やはり音と演奏がいいので、歌のうまさがいっそう際立ち、引き込まれてしまう。アレンジも悪くない。「透明なひとときを」ってこんないい曲だったっけ、と思った。
 もう少し、せめて3年に一度くらいアルバムが出るといいのになと思う。


NAT KING COLE   UNFORGETABLE

No.27 ◆ 2004年8月29日

 この夏は自分の作品作りに没頭していたので、聴く方はほとんど聴かなかった。もっとも、いくら時間があっても夏は音楽を味わって聴く気にはなれない。
 この間時間待ちに寄ったBOOK OFFで、ナット・キング・コールが250円で出ていた。見ると、高い値がついていているのはスーパーに置いてあるようなあやしげなCDで、この250円の方がCAPITOLから出た正規盤だ。この種の店はよくこういうことがある。持っているのとダブりそうだけど、250円だからいいやと思って買った。
 ようやく自作も作り終わり、久しぶりに音楽でも聴こうと思ってこれをかけてみた。
 うん、いいねえ。昔よく聴いたっけ。「プリテンド」が入ってないのが残念だな、ダブってないのはどれだろうと思いながら比べてみると…。なんと全曲ダブっておりました…。というかまるっきり同じ。違うのは、もとから持っていたこっち(写真)の方が、娘と歌った曲が1曲多いだけ。アチャー。ま、いいか。
 ま、そんなことは置くとして、やっぱそれなりに聴かせます。ちょっと甘いけどね。疲れた時にはいいかも。敬意を表して五つ星。
 昔、若い頃、麻雀する時にナット・キング・コールかけてたら、「今頃若い人でこんなの聴いてるの、松田君ぐらいやね」とジャズ喫茶のマスターに、と言われたのを思い出します。


岩井 宏   30才

No.28 ◆ 2004年9月4日

 ついにCD化してくれた。往年のバンジョーの名手、そして隠れた名シンガー・ソングライター、岩井宏の名作。
 素晴らしい。この歌の味わいは他にない。発売の要望を出していたもの一人ではあるけれど、本当に発売されるとは期待していなかった。そして今手にして、聴き直してみて、あらためてうれしさがこみあげてくる。こういう歌が聴きたかった。
 歌のうまさってなんだろう。この歌には、この声、この歌い方が一番合っている。この歌詞と、このサウンドと、この歌い方が、丸ごと岩井さんの人間性を感じさせる。変にいじくりまわしたりせず、たった3人でホームレコーディング、たぶん一発録りだろう。だから、こういう音楽の一番おいしい所を失ってないんだね。
 朴訥な歌声も素朴な味わいも、乗ってる土台がいいから映える。四畳半フォークの貧相さを輝かしいバンジョーの音で救っていた人だ。腕は確かだ。ギターも中川イサトだし。いやあ、こういう歌はありそうでない。  


ERIC CLAPTON & B.B.KING
RIDING WITH THE KING

No.29 ◆ 2004年9月22日

 いいねえ、これ。ずっと家にあったんだけどあんまり真剣に聴いてなかったよ。
 我が家でクラプトンと言えば嫁さんのものだったんだけど、それでも「アンプラグド」とかはよく聴いてた。ここ最近の作品はあんまり面白いとは思わなかったので、これも買ったっきりになってたのかな。
 これ聴くためには、まず、これに没入できる世界を作らなくちゃいけない。時間はまあ夜9時過ぎ。まず蛍光灯を消して白熱灯をともす。苦情が来ない程度にボリュームを上げ、ウィスキーでもなめながら聴く。
 B.B.KINGって今まであんまり面白いと感じたことはなかったけど、このかけ合いの雰囲気がいいね。これも自然な一発録りなんだろうと思う。バックがまたうまいわ。ネイザン・イーストのベースに、スティーブ・ガッドのタイコ。
 ブルースを普段聴いていないと単調に聴こえて飽きてくる時があるけど、これは選曲もよくてスムーズに流れて行く。アコースティックで2曲やってるけど、それがまた引き立っている。「アンプラグド」にスペシャル・ゲストが入った感じだ。と言うより、昔の名人達のセッションを音をよくした感じ。その中に忍び込んだような陶酔感がある。   


DOLLY PARTON   BEST SELECTION

No.30 ◆ 2004年10月18日

 秋雨の月曜日だ。朝からブルースでもない。車で聴いたら、一番しっくりしたのがこれだった。カントリーのおばさんだ。見てくれはちょっと聴きたくない雰囲気だよな。美醜とかいうことじゃなくて、雰囲気がちょっとね。何か「アメリカ万歳」みたいな作品も出してるし。日本で言えばクサイ演歌歌手みたいな感じ、するよね。
 でも僕はこの人の歌、何か好きなんです。声がいいし。コブシと震え声がいい。歌を慈しむように歌っているよね。
 初めて聴いたのは、エミルー・ハリスが好きで買った「TRIO2」。この人の声が全体のいい雰囲気を作っていると感じた。それで1枚何か買おうと思っていたら、中古屋で1枚見つけた。
 まあ、ベスト盤だから、そこそこだ。ベスト盤にあんまりいいのはない。でもBMGのこのシリーズ、解説もしっかりしているし、割りときちんと作ってあると思う。
 「ジョリーン」て昔、オリビアニュートン・ジョンとかいう人の歌ではやったけど、この人の曲だったんだね。アレンジが冴えてる。自分でたくさん作っている人なんだ。やっぱりただのカントリーおばさんじゃない。    


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